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Z8で動画撮影する場合は熱問題に十分注意した方がよい。カメラボディ内部にファンを搭載するような動画専用機と違いNikon Z8は熱にたいして弱い。連射をしないスチル撮影であればほとんど問題はないが、動画撮影となると話は別である。ハイスペックな動画性能を搭載しているにもかかわらず、排熱ファンがないため基本的に最高画質で完走するのは難しいのだ。ネットの情報を見るとファンレスであってもボディが大きいZ9はZ8にくらべ熱停止しにくいようだ。この灼熱ボディでどうやって撮影を乗り切ればいいのか素人ながらに考えてみた。
仕様などは2024年6月に確認したもので最新の情報と異なる可能性があります。ご了承ください。
目次
Nikon Z8の熱問題
熱問題系の警告についてNikonの公式サイトを調べてみたがあまり情報がなかった。邪推ではあるがいくつかのキーワードで試したが見つからないので意図的に説明していないようにも思える。
カメラが高温になっています。温度がさがるまで使用できません。しばらくおまちください。電源をOFFにします。
警告表示と警告メッセージ
熱警告
これはたぶん本体の熱警告だと思う。カード警告とは別で、本体に負荷のかかる処理が入ると発生するようだ。本体警告がでて停止した場合はしばらく撮影が気なくなってしまうので要注意。
HotCard警告
こちらはCFexpressカードの警告で過度のアクセスでカードが発熱するようだ。本体の負荷が少なく書き込みが多くなった場合カードの警告だけになりそう。カード警告で止まったらカードを取り出して冷やせば何とかなる(?)。ただし、カードは高温なのでやけどしないように注意してほしい。
検証環境
室内なので真夏の屋外は気を付けた方がよさそう。炎天下に機材置きっぱなしとか危ないな。
仕様カード
最低継続書込み速度が800MB/sある超コスパカード。今のところ問題なく使えている。
お値段が倍以上違うがお仕事で失敗できないような場合はこちらの方がいいかもしれない。特に熱警告が出るような撮影においては高性能カードの方が安心できる。ただ、コスパカードで今のところトラブルはでていないので微妙ではある。
実験はしていないのだがB1のカードの方が熱警告が出にくい可能性もあるので機会があればテストしてみたい。
Z8の撮影設定
H265 10bit、N-RAW
4K 30~120p
オーバーサンプリング ON or OFF
外部サイトではあるがZ8の熱問題については以下のサイトのレポートが有用である。
撮影環境
室内でエアコンをつけて室温は25度前後と安定。直射日光の当たらない日陰である。カメラを三脚に固定しての撮影で画がほとんど変わらないので実践とはやや異なる状況かもしれない。
検証結果
H265とオーバーサンプリング拡張のプロセッサ負荷が思ったより大きい。
実験結果
N-RAWは120fpsでもメモリMAXまで完走した。H265(10bit)は、熱警告がでて途中で終了。N-RAWとH265(10bit)とでは、プロセッサの負荷がかなり違うようだ。ただし、N-RAWのファイルサイズは驚異的で2Tbくらいないとまともに運用できなそうである。
映像圧縮方式 | 記録画素数/ フレームレート | オーバーサン プリング拡張 | 録画時間 | ファイル サイズ |
---|---|---|---|---|
H265 10bit | 4K120p | ON | 12m43s | 37gb |
H265 10bit | 4K120p | OFF | 18m08s | 53gb |
H265 10bit | 4K60p | ON | 16m51s | 41gb |
H265 10bit | 4K60p | OFF | 115m24s | 283gb |
H265 10bit | 4K30p | ON | 120m05s | 173gb |
H265 10bit | 4K30p | OFF | 120m05s | 173gb |
N-RAW(SDR) | 4K120p | ON | 18m51s | 479gb |
N-RAW(SDR) | 4K120p | OFF | 18m51s | 479gb |
N-RAW(SDR) | 4K60p | ON | 37m42s | 479gb |
N-RAW(SDR) | 4K60p | OFF | – | – |
N-RAW(SDR) | 4K30p | ON | 75m31s | 481gb |
N-RAW(SDR) | 4K30p | OFF | – | – |
熱問題
結局のところプロセッサに負荷のかかる記録方式だとオーバーヒートしてしまうようだ。扱いやすいH265ではあるが、発熱という視点では使いにくいかもしれない。
H265 10bit → 画像処理の負荷が高く発熱しやすい
N-RAW(SDR) → H265にくらべ発熱しにくい
スローモーションを使う場合などうしても120fpsはほしい。H265で120fpsになると発熱的にかなり厳しい。運用としてはスローで使いたいカットだけfpsを上げる感じだろうか。
120fps → 発熱する
30fps → 発熱しにくい
オーバーサンプリングの有無は発熱に大きく影響している。
オーバーサンプリング拡張ON → 非常に熱くなる
オーバーサンプリング拡張OFF → 発熱しにくい
この結果から長回ししたい場合は「オーバーサンプリング拡張OFF and 30fps以下」で撮影が無難そうだ。特にオーバーサンプリング拡張は、発熱を加速させるので長回し優先の場合は切っておいた方がいいだろう。
容量問題
N-RAWの発熱は少なくてよいのだが、容量が尋常ではない。大容量のカードとなるとかなりえげつないお値段になってしまう。軽く短焦点レンズ変えそうな感じだ。
今回の実験データで10分でどのくらいの容量を使うか確認してみた。H265とN-RAWで4倍くらいの差がある。もし、N-RAWを使うなら1,000GBは最低でも欲しいところ。相当高い単価で受注しないと割に合わない気がする。
映像圧縮方式 | 記録画素数/ フレームレート | オーバーサン プリング拡張 | 10分間の 容量(Gb) |
---|---|---|---|
H265 10bit | 4K120p | ON | 29.10 |
H265 10bit | 4K120p | OFF | 29.23 |
H265 10bit | 4K60p | ON | 24.33 |
H265 10bit | 4K60p | OFF | 24.52 |
H265 10bit | 4K30p | ON | 14.41 |
H265 10bit | 4K30p | OFF | 14.41 |
N-RAW(SDR) | 4K120p | ON | 254.11 |
N-RAW(SDR) | 4K120p | OFF | 254.11 |
N-RAW(SDR) | 4K60p | ON | 127.06 |
N-RAW(SDR) | 4K60p | OFF | – |
N-RAW(SDR) | 4K30p | ON | 63.69 |
N-RAW(SDR) | 4K30p | OFF | – |
カラーグレーディング必須の場合などはカードに投資してN-RAW撮影するしかないだろうか。
オーバーサンプリング拡張の効果
簡単にではあるがオーバーサンプリング拡張のありなしで検証してみた。下記の画像は、H265 10bit 4K30pで撮影しpremiereproで5倍拡張して書き出したものである。
書籍のバーコードを5倍に拡大して比較。正直見分けがつかない。
こちらも同条件で撮影したものである。5倍に拡大しても見分けがつかない。
わかりづらいのでもうちょっと拡大してみる。左がオーバーサンプリング拡張ON。若干ではあるがONにした方が細かい線が出ているような気がする。拡大しないとわからない細部ではあるが全体を見たときに「何かいい感じがする」の原因になっている気がする。非常にわかりづらい差異ではあるが画全体を見たときに効果はあると思う。
オーバーサンプリングの効果はありそうではあるが夏場の屋外撮影で無理して使うのは厳しいかも。特にH265 10bitの場合は無理してオーバーサンプリング拡張をONにしなくてもいいのかもしれない。
オーバーサンプリング機能は多少効果はあるが無理して使う必要はない。
4KとHDの比較
仕上げ(納品)をHDにする場合は4KとHDどちらが良いのだろうか。もちろんズームしたい場合は4K必須であるがそうでない場合はどうだろうか?HD出力した場合に素材の解像度でどの程度違いが出るか確認したみた。
以前撮影したときはHD書き出しであってもHDと4Kで画質がずいぶん違う気がしたが、実際に比べてみるとそこまでの違いは感じられない。と、いうか区別がつかないレベルである。オーバーサンプリングと同様で素材解像度はそこまで大きく影響しないのだろうか。
HD出力した動画を約8倍にクローズアップ。するとこんな感じ。左が4K撮影で右がHD撮影である。どちらも出力がHDなのでそこまで画質は変わらないが若干4K素材の方が線がはっきりしているように思える。非常に細かい違いではあるが画全体を見たときに違和感を感じたのはこれだったのかもしれない。
オーバーサンプリングと同じく撮影時の解像度が良いとアウトプットが多少よくなるようだ。
PCやカードの容量に余裕があればHD納品でも4K撮影が無難である。
Z8の熱問題対策
H265で4K120fps撮影する場合はオーバーサンプリング拡張はOFFにしてくのが無難である。
オーバーサンプリング拡張
H265 10bitの60fps以上の撮影は基本的に「オーバーサンプリング拡張」をOFFにしておいた方がよさそう。オーバーサンプリング拡張はプロセッサの負荷が非常に大きいので30fps以外では使わない方がいい。メニューからの切り替えもそこまで手間ではないのでこまめに切り替えた方がいいだろう。特に120fpsはまともに撮影できないので要注意である。
H265 4Kで30fps以上を使いたい場合はオーバーサンプリング拡張をOFFにした方がよい。
長回し対策
セミナーなどの長回しはH265 HD30fpsが無難である。この画質ならまず止まることはない。エアコンの聞いた屋内であればH265 4k30fpsでも十分に耐えられる。オーバーサンプリング拡張をOFFにしておけばまず止まることはないだろう。
H265の4Kで2時間フルに録画したい場合は30fps以下にする。
N-RAW撮影
予算が潤沢にあるならN-RAWもありだろうか。1tb以上のカードを2、3枚用意しておけば何とかなるだろう。ただしカードだけでZ8のボディが買えるくらいの費用である。
N-RAWを使う場合はカード容量に注意。
まとめ
Z8熱問題と言ってヤイヤイ騒いでみたが設定によっては十分に運用できそうな気がしてきた。オーバーサンプリング拡張機能が熱停止に大きく貢献していたようなので危ない場合は早めに切っておいた方がよさそう。プロセッサ負荷の少ないN-RAWは容量的に運用するのが難しい。
もしN-RAW本気で使うならこんな裏技(SSD録画)でもしないとダメかもしれない。
- 4K30fps以下であれば十分に長回し撮影ができる
- N-RAWはプロセッサ負荷が小さいが容量的に運用が難しい
- H264の4K120fpsを使う場合はオーバーサンプリングはOFFが無難
N-RAWのサイズが笑えないレベルでした。