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著作権法で許される引用では条件を満たせば著作者の許可なしに文献を使うことができるとしている。引用できる条件は定量的に判断できないので非常に理解しにくい。ブログを執筆する立場として気を付けたいポイントを参考文献を確認しながらまとめた。過失で違反してしまう可能性があるのでブログを執筆する前に必ず確認してもらいたい。後から記事を修正するコストを考えたら時間がかかってもはじめにしっかりと著作権や引用について理解しておいた方がいい。
本記事は法律にかかわるデリケートな内容のため最終的な判断はご自身の責任でお願いいたします。記事中の条文解釈が必ずしも正しいという保証はありません。法人や大型案件などリスクが高い場合には必ず法律の専門家にご相談ください。
目次
著作権法第32条のポイント
著作権法第32条では著作物を条件付きで著作者の許可なく引用できるとしている。色々とネットで調べてみると正当な範囲内などは明確な定義がないようで具体的にどこまでよいのかよくわからなかった。参考文献を確認しながらブログ執筆時の注意すべきポイントをまとめる。
公表された著作物
引用するものは公表されているものでなくてはならない。気になったのがメールのやりとり。ブログを見ているとサポートとのやり取りをそのまま引用しているケースをよくみかける。利用方法としては正当な範囲ないであると思うが公表されてない点は問題がありそう。
参考
メールや手紙を勝手に拡散するとマズイ?!著作権のネタ帳
メールの引用に関する記事があった。専門家の話だと手紙などの引用は著作権侵害になる可能性が非常に高いと。著作人格権の公表権では未公表の著作物を公表する権利は著作者にあるとしている。
公表権とは、未公表の著作物(同意を得ずに公表されたものも含む)を公衆に提供又は提示する権利のことをいう(著作権法18条、ベルヌ条約には規定がない)。
引用:著作者人格権 – Wikipedia
サポートとのやり取りをコピペで引用しているサイトを多く見かけるが著作権侵害の可能性が高い。メールの内容をコピペしないで紹介しているサイトは著作権を意識していると思われる。やっている人が多くつられてやりそうになるので注意しよう。
メールなどの公表されていない著作物を引用すると著作権侵害になる可能性が高い。
ただ、サポートの返信があきらかなテンプレートで誰もが知りえる情報だった場合どうなんだろう?ユーザーに有益な場合もあると思うんだけど、リスクあるからやめておいた方がいいかな。
主従関係
この文言は著作権法の引用を調べているとよく見かける文言。引用元と引用先の主従関係がかっきりしていて引用先が主であることがわかる必要がある。量的に考えると執筆部分より引用部分が少なくてはならない。質的にも主従関係がはっきりしていることが求められる。例えば引用した著作物とまったく同じ目的で重要な部分を引用していたら違反になる可能性が高い。重要な部分を引用が占めるのでどっちが主かわからなくなってしまう。
「引用」とは、例えば論文執筆の際、自説を補強するため、他人の論文の一部分をひいてきたりするなどして、自分の著作物の中に他人の著作物を利用することをいいます。
引用:著作物が自由に使える場合は? | 著作権って何? | 著作権Q&A | 公益社団法人著作権情報センター CRIC
量的な問題は理解しやすいが質的な問題の判断が難しい。自説を補強するためと言われてしまうとこの記事自体がダメなような気がしてきてしまう。著作権の引用についてまとめたまとめサイトに近いものになってしまうのだろうか。本記事は「著作権の引用について参考文献を確認しブログで気を付けたいポイントをまとめる」なので参考文献と目的が違うから大丈夫という認識でいる。ただし引用の量が多いのでそこはちょっと気になる。
引用した文献のコンセプトと同じものはやめた方がいい。競合する内容になった場合引用ではなく「パクリ」になってしまう可能性がある。引用元と違う切り口にしてリスクを軽減させたい。読み手がみて「ん?どっちも同じこといってるじゃん」となったら良くない。読み手が引用元文献とくらべ「あぁこういう切り口もあるのか」、「整理されていてとてもわかりやすい」と思ってもらえるといいかな。
質的量的に引用側が主であることがはっきりわかる内容にする。
正当な範囲内
これも主従関係にも影響するかもしれないがちょっと切り口が違うか。たとえ主従関係で引用先が主であったとしても引用の範囲を超えていたらアウト。例えば写真を引用して引用先の内容よりも引用した写真がメインになってしまうとか。例え引用したつもりでも写真の価値をそのまま利用したらアウト。量的な問題と引用先とどれだけ結びつきが強いかも重要である。
引用元の価値を引用先がそのまま利用するような引用はできない。
引用元と引用先の結びつきが弱い場合は引用とみとめられない。
明瞭区分性
引用元をはっきり区別できるようにする必要がある。ブログなどで言えばblockquoteタグで引用個所を囲う。これは、特に問題ないかな?引用部分をblockquoteでくくらないと重複でGoogleからペナルティをもらう可能性もある。SEO的にも明瞭区分性には注意したい。
引用部分をblockquoteタグで囲い見た目でも引用部分と区別できるようにする。
出所の明示
これはwikipediaなどを見るとよくわかるが出典が末尾に明記されている。引用したら引用したサイトや書籍などの情報を必ず明記する。書籍であればどこのページか、サイトであればURLとサイト名を出典として引用との関連がわかるように記載する。
引用したサイトや書籍の情報を出典として明記する。
必然性
これは主従関係にも関連してくる。必然の反対は「偶然」だろうか。そもそも、何の脈略もなく突然引用するケースなんてあるんだろうか?ちょっと意味がわからない。例えば著作権の話をしているのに突然アイドルの水着画像を引用するとか?そうなると過失じゃなくて故意による違反になりそう。
A.「引用」とは、例えば論文執筆の際、自説を補強するため、他人の論文の一部分をひいてきたりするなどして、自分の著作物の中に他人の著作物を利用することをいいます。
引用:著作権なるほど質問箱
「自説を補強するため」と考えたら脈略の無い引用は起こりえないはず。引用部分を見なくても内容がわかるようならそもそも引用する必要がない可能性もある。その場合は引用せずに参考文献として出典すればいい。引用がないと話が見えないつながらない場合は必然性があると考えてよさそうだ。
自説を補強するためにどうしても対象文献の情報が必要な場合に引用する。
引用の判例など
ネットで見つけた著作権の引用に関連した判決などを確認しポイントをまとめる。
脱ゴーマニズム宣言事件
最近知ったのだがこれは引用に関してかなり有名な事件のようだ。
『脱ゴーマニズム宣言』事件(だつゴーマニズムせんげんじけん)とは、小林よしのり著『ゴーマニズム宣言』を批判した書籍『脱ゴーマニズム宣言』(上杉聰著)の発刊を巡って争われた日本の事件。漫画において引用が認められる範囲について明確な基準を引き出した事件である。
引用:脱ゴーマニズム宣言事件 – Wikipedia
ポイントは3点あって絵を含めた引用、引用部分の改変、タイトルの引用である。
絵を含めた引用は判決ではセーフになっている。批判のためには絵も引用する必要がある場合はいいんだとか。でも、漫画紹介系のブログをみてるとほとんどが絵の引用はしていない。執筆時に確認したところ漫画の紹介で絵を引用しているサイトは1割程度であった。法律的には引用可能だけどやめといた方がいいのかなぁ。ちょっと悩ましい。
引用した部分の改変については基本的にはアウト。著作者人格権があるため引用した文書や画像などの加工はやめておいた方がいい。ただし、この判例では「人物の名誉感情を害するおそれがある」として改変を認めている。人物の名誉感情を害する改変は引用以前の問題で名誉棄損になる。
タイトルの引用も必要性があるとしてセーフ。漫画のレビューなんかだと記事のタイトルに漫画名いれないとわからないのでこれはセーフであってほしい。
必要性があれば漫画の絵を引用することができる。
基本的に引用部分の改変は禁止されている。
美術品鑑定証書引用事件
著作物ではない鑑定証書に縮小コピーの絵画を引用として使用できるとした判決。
参考
最近の著作権判決から ――「美術品鑑定証書引用事件」(知財高裁2010年10月13日判決) 二関辰郎|コラム骨董通り法律事務所 For the Arts
参考文献が非営利のCCライセンスであるため引用は避けておく。詳しくはリンク先で確認していただきたい。
鑑定書につける絵画の縮小コピーは美術的な目的ではなく贋作などを防ぐために使われる。そもそも鑑定書用に縮小コピーしたところで絵画や著作者に対して不利益がほとんどないと思うのだが何で訴えたんだろうか?そこがよくわからない。
鑑定書など著作物ではないものでも必要性があれば引用は可能である。
藤田嗣治絵画複製事件
美術史を紹介する書籍で絵画の引用はアウトとなったケース。
参考
5.1 著作物の引用の要件・ポイント弁護士法人クラフトマン IT・技術・特許・商標に強い法律事務所(東京丸の内・横浜)
引用先に観賞用としての価値があるので絵画の引用はできない。美術品としての価値を引用先で利用しているのでダメなんだろう。論文の結びつきが少ないのもアウト。
引用する場合は正当な範囲を超えてはならない。
XO醤男と杏仁女事件
小説に詩を引用してアウトになったケース。ダメな理由は、全文掲載、批判や研究目的でない、必要性ないこと。
参考
5.1 著作物の引用の要件・ポイント弁護士法人クラフトマン IT・技術・特許・商標に強い法律事務所(東京丸の内・横浜)
必要があれば全文掲載は問題ないと思うがボリュームが多いと主従関係もあいまいになってきそう。全文掲載すると引用元と近い価値が発生してしまうのでやっぱ問題ありそうな気がする。
鑑定証書も批判や研究目的ではないのでどうなんだろう。
詩を引用する以外の方法でも目的を達成できたので必要性がないとしている。必要性がなかったり、引用元との結びつきが弱いのが原因だろうか。
引用する場合は必要性が無い限り全文を使用しない方がいい。
引用がなくても自説を主張できるなら結びつきが薄いので引用しない方がいい。
まとめサイト
まとめサイトは昔から限りなく黒に近いグレーであることは知っていた。
参考
「まとめサイト」は法的にグレーな存在? 弁護士が「著作権」の問題点をくわしく解説弁護士ドットコム
結論を言うとまとめサイトはグレーらしいが今後どうなるかわからないと。著作権を考えるとまとめサイトはリスクが高いのでやめた方がよさそう。まとめサイトの引用を世論が許すとは思えない。まとめとは言え掲示板から情報を抜き出しているだけでオリジナリティがほとんどない。主従関係が逆だし正当な範囲を完全に超えているように思える。
まとめサイトは著作権的リスクが非常に高い。
まとめサイトに30万円の賠償命じる判決
まとめサイトに画像を無断利用されたナカシマ723さん(無断転載スレイヤー)が起こした裁判。
参考
イラスト無断転載、まとめサイトに30万円の賠償命じる判決 「VIPPER速報」「ガールズVIPまとめ」など訴えた注目裁判が決着ねとらぼ
この記事を読むとわかるが著作権を侵害された方がかなり不利に思えた。訴えるのに弁護士費用などがかかるため賠償金を請求できたとしても赤字になる可能性がある。訴える側に費用面のリスクがあるので個人だとちょっと難しいんではないだろうか。
まとめサイトは運営会社との関係を隠していたりするので確信犯なのだろうか。この機会にまとめサイトをのぞいてみたが引用の範囲を超えた転載が多くありそうだった。芸能人の画像などはパブリシティ権や肖像権的にダメなんじゃないかな。
無断転載による著作権侵害を訴える側に費用面のリスクがある。
まとめ
著作権の引用に関連する文献を確認してみたが全然まとめられなかった。主従関係や引用の正当性などはひとことで語れないのでまとめようとするのにどうしても無理がある。申し訳ないがポイント一覧にしたがほんと収集が付かない。
ポイント | コメント |
---|---|
メールなどの公表されていない著作物を引用すると著作権侵害になる可能性が高い。 | これがだめだとすると違反しているサイトが数多く存在している。よくある例ではサポートなどの問い合わせ結果を引用として載せる例である。悪質ではないし読者にとって有益な場合もあるのでゆるされてのいいと思うが、法律的に怪しいので結論としてはやめた方がいい。 |
質的量的に引用側が主であることがはっきりわかる内容にする。 | 例えば難しい文言の解説をする場合はどうしても引用の割合が増えてしまう。必然性があれば許されるが可能な限り引用の割合を減らした方がいい。意味が通じるギリギリまで引用を減らす。割合が低い方がリスクが少なくなる。 質的解釈はちょっとわかりずらいが文書構造的に引用部分がその一部であった方がいい。引用部分が全体を構成していたら主従関係がわからなくなってしまう。それを考えると目次をまるごと引用して構成するのもだめだろう。 |
引用元の価値を引用先がそのまま利用するような引用はできない。 | 引用先で新たな切り口で価値を生み出していればいいだろう。ユーザーが引用元でも引用先でも同じ価値しかないと思ったら引用先の存在価値もないし主従関係も崩れてくる。引用元とは異なったコンセプトや自説を明確に主張する必要がある。 |
引用元と引用先の結びつきが弱い場合は引用とみとめられない。 | なんとなくこれがあるとわかりやすいよな的な引用はやめた方がいい。内容もわかりづらくなるし引用と認められない可能性もある。引用が無いとどうしても説明に困る場合だけ引用するようにする。 |
引用部分をblockquoteタグで囲い見た目でも引用部分と区別できるようにする。 | これはネットで情報を発信している人にとっては常識だと思う。重複文書はGoogleからペナルティを受けるそうなので引用部分はからなずタグで囲むようにする。 |
引用したサイトや書籍の情報を出典として明記する。 | 書籍であればISBN、タイトル、ページを。サイトでればタイトルとURLを出典として明記する。これないとあとで自分がどこから引用したのかわからなくなってしまう。法律もあるが自分のためにもやっておいた方がいい。 |
自説を補強するためにどうしても対象文献の情報が必要な場合に引用する。 | 繰り返しになるがふんわりした感じで引用したらだめ。この引用の文言があることで自分の主張がさらに強化されるとかいう場合は積極的に使った方がいい。文書を推敲して引用を極限まで削るように努力しよう。 |
必要性があれば漫画の絵を引用することができる。 | 脱ゴーマニズム宣言事件の判例では漫画の絵を引用することはよいとされている。しかし、漫画のまとめ記事を見てみると絵を引用している人はほとんどいない。あっても1割程度。法律で許されても出版社が許さないんだろうか?物販アフィリエイトの規約も関係しているのかもしれない。アフィリエイトの規約は法律とは違うので出版社から圧力がかかれば規約違反になる可能性もある。漫画の絵の引用は法律では許されるがリスクが高いので十分に注意したい。 |
基本的に引用部分の改変は禁止されている。 | 脱ゴーマニズム宣言事件では必要性があって改変が可能であるとしたが、基本的に改変はできないと思った方がいい。著作者人格権で改変は禁止されているので引用するときは加工せずにそのまま使う。 |
鑑定書など著作物ではないものでも必要性があれば引用は可能である。 | 著作物以外を作ることはまりないので割愛する。 |
引用する場合は正当な範囲を超えてはならない。 | 主従関係が崩れるような引用はだめと。あとは必要のない余分な引用もやめた方がいいか。繰り返しになるが引用元と同じコンセプトだと競合するのでやめた方がいい。 |
引用する場合は必要性が無い限り全文を使用しない方がいい。 | 短い文なら全文でもいいかもしれないがある程度ボリュームのある文献をガッツリ引用するのはやめておいた方がよさそう。 |
引用がなくても自説を主張できるなら結びつきが薄いので引用しない方がいい。 | これも繰り返しだが必要のない引用はやめる。 |
まとめサイトは著作権的リスクが非常に高い。 | 儲かるからやる人がいるんだろうな。 |
無断転載による著作権侵害を訴える側に費用面のリスクがある。 | 無断転載されたら訴えなくても連絡だけはしてみよう。裁判にならずに賠償金がもらえることがあるそうだ。 |
最後にブログで引用を使う場合のポンとをまとめておく。blockquoteでくくるや出典元を明記するのはわかりやすいがそれ以外がなんともわかりにくい。
- メールのやり取りは引用でも公表しない
- 引用元と同等の価値になる記事は作成しない
- 自説の補強にどうしても必要な部分だけ引用する
- 引用部分は判別できるようにblockquoteで囲う
- 引用したサイトや書籍の情報を出典として明記する
- 引用部分を改変してはいけない
- 漫画の絵の引用は法律で許されるが積極的にやらない方がよさそう
- 自説との結びつきが弱い引用はしない
最後の最後に筆者が個人的に気を付けたいポイントを2つあげる。
- 引用先の記事に自説の軸がしっかりある
- 引用部分を必要最低限にとどめる
法律は知らなかったでは済まされないので著作権法を違反しないように公になる文書を作成する人は最低限のルールを理解しておきましょう。